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第24話 悪い先生

 まだ掌の中にあるそれはビクビクと余韻に浸っている。うっすらと汗をかいて湿った、敏感な肌にはジャージの襟を立てないと見えてしまうような場所に、くっきりと昨日のよりも鮮やかなキスマークが残っている。 「あっン」  乳首を爪で弾かれて、蕩けた顔の郁登が甘く啼いた。自分の精液がかかっている鏡をぼぅっと眺めながら、よろける身体を前についた手で支えた。 「郁登、感度良いよね」 「あ、やァ……だって、健人が、そこ、いじるから……」  クリクリとまたそこをいじられると、唇を震わせながら、眉をひそめている。 「健人……」  身体を支えるためについた手を片方だけ、後ろにいる俺へと伸ばして、まだ乱れていない服をたくし上げて、ズボンを引っ張っている。  お願い――そう切なげに懇願されて、半裸の身体を俺に預けながら、尻を少し押し付けて、そこに興奮の証がちゃんとあることを確認していた。鏡の前で乱れる郁登をずっと見つめながら、ズボンの中で限界まで張り詰めた屹立を手じゃなくて、直接、尻で擦り上げられると、息が詰まるくらいに欲望が大きく、熱く、身体の中心で煮えたぎっているみたいだった。 「挿れて欲しい?」 「あ、ン……」  振り返った郁登の顔は欲情している。やらしい顔に喉が鳴った。 「本当に……困った先生だね」 「あ、だって、健人が悪いんだろ」 「だって俺、悪い先生だもん」  ニコッと微笑んで、ズボンを下ろしながら、空いているほうの手を郁登の身体の奥へと割り込ませる。もうすでに一度達した郁登のおかげで濡れている俺の指は、張りと弾力のある尻の奥へとヌルッと簡単に入っていった。 「昨日したから、柔らかい」  今すぐにでも掻き混ぜたい。そう思いながら、孔を指で広げて、この後の衝撃にも馴染むように解しているのに、俺の理性を全て溶かしてしまうくらいに、甘ったるくて、乳首だけよりも卑猥な声で誘われた。喘ぐ姿は今も目の前の鏡に映し出されている。  昨日よりも柔らかい孔の中、男とセックスしたってわかってしまう身体は、何よりも強い毒薬そのものだ。いくら水泳部は皆が裸だからって、こんな卑猥なもの、男子高校生にはダメだろ。襲われるに決まっている。 「や、ァ、指……ン」 「何? 指じゃヤダ?」 「……こっちがいい。これを奥に欲しい」  竿を撫でられて、招かれるような愛撫に目が眩んだ。濡れている体内は溶けているみたいに熱くて、中に自分のそれを収めた時の快感を想像するだけで、息が荒くなる。 「お願い、も、熱くて、おかしくなりそう」  おかしくなるのはこっちだ。こんな眩暈が起きるくらいに欲しいなんて、今まで郁登とのセックスでしか味わったことのない興奮に、本能のまま突き入れて、貫いてしまいたくて仕方がない。 「郁登……」 「あ、ァ……熱い」  孔の入口に先端を当てただけで、そう呟かれた。俺は答える余裕もないまま、その先端を濡れて柔らかくて、なのにきつい孔の中へと、一気に押し込める。 「あ、あ――――っ!」  昨日したせいで柔らかいくせに、昨日よりも狭くて、吸い付いてくる体内に、もう限界だった。  ひとり暮らし用の狭い洗面所で、窮屈な体勢になりながらも、細くて引き締まった腰を突き出す郁登。尻たぶを広げて、奥までくわえ込ませたそこを出入りする自分のものをじっと見つめていた。 「郁登、中、すごいよ」 「あ、あ、あァァん!」 「奥、溶けてそう」  溶けているみたいにねっとりと絡みつくくせに、しっかりと咥え込んで、狭い中はまるでフェラされているみたいだ。荒い息を郁登の耳元で吐きながら、細い腰をしっかり捕まえて、何度も奥を突き上げた。熱気の篭もったこのバスルームが暑いのか、それともセックスに夢中になっているせいで、身体の熱が上がっているのか、捲り上げられた郁登のTシャツも、俺の釦だけを外して、肩に掛けているだけのシャツも、しっとりと湿っているくらいに汗をかいていた。 「あ、あ、健人、奥に届いて、ンンンっ!」 「ここ、でしょ?」 「あ、あァァっ! あ、すごい、ン」 「郁登の中、最高に気持ちイイ、嵌って、怖い、くらい」  今までのセックスをなかったことにするほどの威力だよ。こんなの味わって、きっと俺はもうダメだ。他の奴とセックスして、興奮できる気がしない。 「ホ、ント? 気持ちイイ?」 「中で咥え込んでるから、わかるでしょ?」 「あっあンっ奥、あ、来てるっ」  張り詰めた先端で、ズンズンと前立腺を貪られている郁登は、自分も腰を振って、中を好きなところへと擦り付けている。ぐちゅっと響く音がだんだんとそのリズムを速めれば、郁登の嬌声も甘く卑猥に同じリズムで零れた。  郁登とのセックスは全部を持っていかれる。この俺を咥え込んだ身体に全部を支配されて、怖いくらいに他が見えない。 「郁登、中でイかせて」  そう耳元に煽るような声で囁くと、コクコクと頷く切ない表情が鏡に映っていた。薄く開いた唇を後ろから指で撫でると、少し開いた奥にある舌に絡めとられた。そのまま指を音がするくらいにしゅぶっている。 「あ、ぅっん!」  健やかな肌は妖艶なものに変わって、ちょっとした刺激さえ、しっかり快楽として捉えてくれる。歯を立てて、唇で吸うと、腰を突き入れて擦り上げている中がきゅっと締まって、感じていることを教えてくれた。そのままうなじや、背中、肩を愛撫していると、俺のうなじを指でなぞってくれる。刺激としては可愛いもののはずなのに、しゃぶりつかれている竿から与えられる快楽で火照った身体には、イきそうになるほど強い刺激に思えた。 「郁登、乳首、ビンビンだけど、触らなくていいの?」 「あ、あ、やだ……触って」 「自分で触ってよ」  濡れて溶け合うように繋がって、激しく絡まっているセックスのせいで、郁登は迷うことなく、空いているほうの手を自分の乳首へともっていった。 「すごい……やらしい人」  鏡に映っている姿を濡れた瞳で見つめて、郁登は自分自身のその姿にさえ興奮して、俺を締め付ける。  後ろから身体が浮くくらいに突き上げている俺のうなじに掴まって、俺の指をフェラしながら、自分の乳首をいじって気持ち良さそうに喘いでいる姿。 「そんなに締め付けないで、イく」 「あ、も、だって、奥に」 「郁登だってイきそうでしょ?」  俺もだよ、そう鏡の中で喘いでいる郁登に微笑んで、その引き締まった腰をしっかりと片手で捕まえると、そのまま本能に任せて、奥へと何度も腰を押し付けた。 「や、あ、ァ、健人、すご」  前立腺を先端で愛撫しながら、中が頂点に向けて収縮していくのを感じて、もう頭の中が真っ白になった。 「あ、ン、あァ、くる、ァ」 「郁登、好きだ」 「やァ、あぁぁぁっんん――――!」  こんなやらしく腰をくねらせて、熱で繋がった場所が溶けそうなセックスしたら、こんな切ない顔で好きな人に見つめられたら、もうダメだ。嵌って、抜け出せない。こんなに好きな人とのセックスを知ってしまったら、誰にも同じ感情を抱ける気がしない。 「ホント、悪い先生」  中に打ち付ける大量の熱を飲み込むような郁登の体内に捕らえられたまま、俺はそれを堪能するように、最後まで腰を揺らめかせた。愛しい人の中にいつまででも包まれていたい、そんな願いを込めて、その肩に歯を立てた。

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