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クリスマス番外編 5 ふしだらクリスマス

 嫉妬に狂う、とはよくいったものだ。 「はぁぁぁぁ……」  ホント、おっそろしいことをしたな。  職場の人間との宴会途中、吐きそうなんだと同じ教職につく恋人をトイレに連れ込んで、いかがわしいことをした。他の先生たちが様子を見に来なかったのは、本当にラッキーだった。たぶん俺たちが個室に篭もっていた間にやって来たのはどっかで飲んでた大学生かなんかの二人組みだけ。他に入ってきた気配はなかった。  ――急に帰っちゃうから驚きましたよー。大丈夫ですかー? あの後、教頭と学年主任が裸踊り対決して、その拍子にズボンが脱げて大騒ぎでしたよ。めちゃくちゃ大爆笑でした。それでは! また新学期宜しくお願い致します。  大嶋先生が呑気な人でよかった。そして、とても鈍感で、のんびり屋でよかった。  あと、教頭と学年主任の裸踊りがとても面白い催し物でありがたかった。話題をさらってくれただろ? 俺らが途中退場したことだってほとんど注目されずに済んだっぽかったし。  っていうかさ、俺って、そういうキャラだったっけか?  まぁ、相手が郁登だからっていうのもあるけど、まさかの早とちりとか。  今までだったら……どうしてただろうな。そのまま、離れるなら離れるでもいいって、そっとしとくかもな。  三年経つんだけどなぁ。  ベッドの中、うなだれると溜め息をひとつついた。  三年経とうが嫉妬に狂った自分に翌日の朝、反省しつつも髪をかき上げ――。 「っぷ」 「……何、盗み見してんの」 「だって」  いつの間にか起きていた郁登がうつ伏せで顔を腕で隠しながらこっちを観察してやがる。 「何」 「昨日の健人、エロかった」 「あのな、エロかったのはっ、」 「?」  ゾクリとする。  起き上がって、郁登が俺を覗き込んで。知ってか知らずか、その肌のあちこちにキスマークをくっついてるのが、なんとも。今日から学校が休みだからと盛大に昨日のセックス痕跡が散らばっている。普段、Tシャツにジャージ、水泳をやってるからか脱ぐことにも肌の露出にもあんまり抵抗がない郁登相手じゃ、キスマーク一つだって気を使う。夏になれば絶対につけられないのに、こいつは敏感だから、肌へのキス一つでどエロい顔するし。  ホント。  タガが外れた。 「健人はエロいよ」 「は? エロいのは、郁登だろ」 「違うんだって。健人がエロいから俺がエロエロになっちゃうだけ」  ――あ、あぁっん、もっと、して、奥んとこ、健人のでかいのでトントンってされたいっ! 「独占欲、だけでイけそうだった」  ――中に、欲しいっ健人がイくの、欲しいっ! 「すっごい嬉しかった」  やっぱ、エロいのは郁登だ。そして日増しにそれは甘くなっていく。 「最高のクリスマスだった」  クリスマスにしては性欲丸出しでふしだらな夜だった。 「本間先生とは本当になんもないの?」 「ないってば。本当にダイエットメニューとか一緒に考えてもらってただけ。それになんでか、健人のこと気にしてたんだ」 「は?」 「だから最初、危険視して俺が話しかけたんだよ」  保健と体育、授業で怪我をした生徒を連れて行ったり、何か話しがある度に、金沢先生と仲良しですよね? 同期なんですか? あれ? 今日はご一緒じゃないんですか? そう訊かれて不思議だったって、郁登が首を傾げてる。  おい、それって。 「あ、ごめん。電話だ」  それって、俺らのことバレてるんじゃ? あんまり学校では話たりしないようにしてるのに、どこで? 仲良し? いつ? 今日はご一緒って。 「あ、もしもし? 慶登(けいと)、何? 年末? いやぁ、忙しいかも。って、慶登だって、忙しいんじゃないの? 真面目だなぁ。俺? 俺は頑張ってるよ」  慶登?  誰だ?  親しそうだ。 「大変っしょ? ……へぇ、頑張ってるじゃん。うん……いいよ。そのうち、酒飲みながら……あははは、酒癖はぁ、あんま治ってないかも」  酒飲みながら? 酒癖? 「あの時は、俺ちゃんと寝たじゃん。慶登のこと、夜中に蹴ったのは悪いけどさぁ」  は? 何? 寝た? 夜中に蹴ったって、一緒に寝たってことか? 「うん。うん……そんじゃ、また新年に。はーい。じゃあねぇ」  新年って。 「…………」  電話を切った郁登が嬉しそうに微笑んで、そして、手に持っていたスマホをベッドの下に置いた。  にやりと笑って、四つん這いになって近寄ってくる姿はまるで肉食獣みたいなしなやかさ。そして、チラりと見える、硬くツンと尖ってそうな乳首。 「妬いた?」 「……」  俺の上に跨ると、太腿の内側にも色鮮やかなキスマークが散らばっていた。腕を首に絡めて、目の前に昨日たんまり味わった乳首を見せびらかして、ふしだら極まりない朝を所望する、スケベでいやらしくて、エロい恋人。 「あぁ、妬いた。誰? 今の、慶登、だっけ?」 「ん、ぁっ……俺の、ぁ、乳首、ぁ、舐めて」 「乳首じゃなくて、俺の、何?」  乳首を舐めただけでペニスをぴくんと揺らす。  朝で、昨日の名残り残る身体は普段以上に敏感になってる。何度も何度も抱いて、この身体は昨夜、気持ちイイことに溺れきっていたから、濡れて沁み込むのが早いんだ。快楽がさ。 「俺の、弟」 「……は?」 「? あれ? 言ってなかったっけ? 俺、弟いるよ? しかも学校の先生してる。あ、でも俺と違って小学校の教諭」  こんなエロい教師がもう一人いるのか? しかも、小学校の? 普通に、そんなの、ダメだろ。 「今、なんか失礼なこと考えてただろ」  口をへの字にして俺の頬をやんわりと抓った後、また首にしがみ付き、そっと俺に口付けをする。 「弟の慶登はすっごい真面目で、真面目で、真面目。彼女いない歴イコール年齢。すごいだろ。顔は似てるけど、真面目すぎて、って、ダメだかんな! 手出したら」 「出さねぇよ」 「ぁっ……ん」  こっちこそ心配なんだ。郁登は欲に忠実で、気持ちイイことが大好きだから。 「ぁ、早く、挿れて、まだ、柔らかイ、から、ぁ、あ、あ、あっ……ん、あ、乳首、噛みながら、したら、ダメっ」  欲に忠実で、気持ちイイことが大好きだから。 「ぁ、ぁ、ぁっ、イっくぅっ」  挿入だけでイける快感が染み込んだ身体をくねらせる郁登を抱き締めたまま、下から強く突き上げた。 「あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!」  ふしだらな朝、人生初の真剣恋愛。 「ぁ、健人ぉっ」  空前絶後の三年目突入目前。お恥ずかしい話ですが、もうずっとラブラブ――。 「あっ……ン、好き」 「俺もだよ、郁登」  もうずっと、君にだけ夢中。

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