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第3話 正人の好きな人
姉が姿を消して一番に驚いていたのは両親だった。次に忍。恋人のはずの正人が、一番平然としていた。
それがなぜか忍には分からなかった。けれど、正人の話しを聞き、忍は真実を知る。
「俺と忍の姉さんは付き合っていたわけじゃ無かったんだ」
「え……?」
「アイツには他に好きな人がいて、その人の気を引くために俺が協力していたんだ」
話しを聞くと、姉は会社の上司で既婚者の男と付き合っていたらしい。その男は、別れると言っときながらも、なかなか奥さんとは別れてはくれなくて、それに焦れた姉がその話しをよくしていた正人に協力を申し出たらしい。
相手に刺激を与える為に付き合って欲しいと。
そして、昨日。姉はようやくその男と一緒になる事ができ、それを両親に話す事はできず、姿を消す形を取ったようだ。
なんて突拍子も無い話しだ。でも、正人の次の話しに、忍は今までにないくらいに驚く。
「俺、ゲイなんだ」
「え……?」
「あと、忍の事が好きだ」
それは本当に突然で、忍は心の準備もしていなかった。それに、その日も忍は男と寝た後で、身体中にはその男に付けられた痕が服に隠れて散らばっていた。
そんな身体で正人を受け入れる事はできないと思った忍は、正人の告白を断った。
「ごめん。俺…正人の事……好きじゃない……」
そんなの嘘だ。本当は誰よりも正人を愛してる。でも、今までしてきた自分の行いは正人のように汚れない男には不釣り合いだと考えなくても分かる。
(これでいい……)
忍はその日から正人と距離を置くようになり、誰かと身体を重ねる事もしなくなった。
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