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第4話 こんなの知らない

 スマホを壊したのは今までに身体を繋げて来た男達からの連絡を見るのが嫌になったからだ。  来る人数分、相手にして来た現実を突き付けられる。  そんな自分が汚いと、初めて思った。  正人の告白は何よりも嬉しかった。初めて、生きて来て良かったとさえ思った。でも、それは一瞬だ。  正人とは混じりえない事をして来た今までの自分の愚かさが波のように押し寄せた。  忍は泣き腫らした目で左手の小指を見詰める。今まではそこに何も見えなかったのに、正人に告白をされてから、そこに一本の赤い糸が繋がっているように思えてしまい、何度も何度も頭を振った。  これは願望だ。願っては駄目だ。叶わないんだ。そう、心の中で自分に言い放った。  こんな気持ち知らない。知りたくも無かった。なのに、頭の中を埋めるのは正人の事だけだった。 「忍……」 「!」  ガチャッと部屋のドアが開いた。そこには心配そうな顔をした正人がいた。

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