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第6話

 気がつけば十月も中旬を過ぎていた。突然風は冷たく吹きさらし、日が落ちるのも驚くほど早い。  さすがに諦めつつも、諦めきれない自分に内心呆れながら、気付けば足は公園に向かっている。  出会いは衝撃。呪いをかけられたように魅了され、呼吸も難しい。一カ月ぶりに見たその姿は凛々しく、気高く、美しかった。  犬などではない。  白い光に照らされながら、輝かんばかりに長い毛並みを風になびかせる。息を呑んで、僕はその姿に魅せられる。  我に返るのはいつも向こうが気付いた時だ。その時にはすでに遅く、長い脚を軽やかに走らせて去っていくのだった。  それでも僕の顔は緩む筋肉を抑えられそうになかった。昂ぶる興奮で、今にも走り出したい気持ちを抑え込みながら、僕は夜の道をにやにやと引き返した。  それからさらに一カ月通って仮説を立てた。  オオカミは月に一度しか現れない。それも、満月の夜だ。  偶然なのか、必然なのかわからないが、そんなことは問題ではない。  それよりもルドルフに未だに話していないことが、月を重ねるごとに僕に重く圧し掛かってきていた。  彼とはあの夜以降、一度も話題にも上ることなく、僕もわざわざ掘り返すようなこともせず、結局伝えられないまま、四度目の満月を迎えた。

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