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第7話

 季節は冬の様相を纏っていた。まだ雪は降らないが、身を凍らせるような風に身震いする。  そうやってどれほど待っていただろうか。いつもならとっくに現れているはずの姿が見えず、僕は顔を顰めた。  ――おかしい。  スマホを取り出して、満月の周期を調べる。12月22日。確かに今日は満月だ。  僕は空を見上げた。視界を遮る白い息が消えると、澄み渡った夜が広がる。雲一つない快晴。頭上高くには丸い月が黄金に輝く。  僕はおもむろに立ち上がると、白い息を吐きながら歩き出した。広場に気配はなかったので、周囲の草陰を掻き分けながら進んでいく。  嫌な予感が腹の底から湧き上がってきていた。  敷地の奥、公園と森の間で見つけた時は、心臓が止まるかと思った。何かが横倒しになって転がっていた。あの白狼だ。  目を閉じ、小さく開いた口からは浅い呼吸が繰り返され、見るからに辛そうだ。  その理由は明らかだった。倒れた地面から、赤黒いものが流れ出している。考えるより先に身体が動いていた。  何とか抱き上げて――すでに身体は冷え切っている――車へ乗せると、アパートへ向かった。

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