11 / 132

第1話 ⑩

 この幽霊男の話が全て真実ならば。  俺はこの先、こいつとセックスしなければならないのだろうか?  圭介は、顔を強ばらせて幽霊男を見た。ニヤリといやらしく笑った幽霊男を目が合う。 「ま、そういうわけで、時々お世話になるから」 「いやいやいや……俺、男となんて無理だし! ていうか、お前、幽霊だし!」 「女とはあるんだろ? だったら似たようなもんだって」 「そういう問題じゃないって! っていうか、なんで俺が受けなわけ??」 「俺が攻めだからじゃん。ちゅーか、受けとか知ってんじゃん。本当は経験あんじゃねーの?」 「ないって! 人から聞いた程度の知識だけど……。いや、そうじゃなくて! 大体……男とやったって気持ちよくもないし!」 「それは任せろ。時間かけて開発してやるから」 「……これ、俺に拒否権ないの?」 「ない。ここに住む限り」  とっさに出ていくことを考えるが。圭介に同じ予算でまともな住居が見つかるとは到底思えなかった。  最悪……。  なんとか拒否する方法はないのだろうか。しかし、さっきみたいに金縛りで自由を奪われたらもうどうしようもない。自分には金縛りを解く力もないし。 「あ、そういや、お前の名前なんなの?」  青い顔をして呆然とする圭介など全く気にもせず、幽霊男が聞いてきた。 「……圭介。一ノ瀬圭介」  条件反射で素直に答えてしまう。 「圭介ね。俺の名前も知りたい?」 「別に……」 「なんだよ。冷たいじゃん。名前知っといた方が便利だろ? お互い。俺は樹」 「たつき……」 「そう。そしたら、これからよろしくな、圭介くん」  そうわざとらしく言って樹がニヤッと笑った。その小憎たらしい男前の笑顔にきーっとなりつつ、圭介はこの先の自分の大学生活を思い途方に暮れた。

ともだちにシェアしよう!