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第1話 ⑩
この幽霊男の話が全て真実ならば。
俺はこの先、こいつとセックスしなければならないのだろうか?
圭介は、顔を強ばらせて幽霊男を見た。ニヤリといやらしく笑った幽霊男を目が合う。
「ま、そういうわけで、時々お世話になるから」
「いやいやいや……俺、男となんて無理だし! ていうか、お前、幽霊だし!」
「女とはあるんだろ? だったら似たようなもんだって」
「そういう問題じゃないって! っていうか、なんで俺が受けなわけ??」
「俺が攻めだからじゃん。ちゅーか、受けとか知ってんじゃん。本当は経験あんじゃねーの?」
「ないって! 人から聞いた程度の知識だけど……。いや、そうじゃなくて! 大体……男とやったって気持ちよくもないし!」
「それは任せろ。時間かけて開発してやるから」
「……これ、俺に拒否権ないの?」
「ない。ここに住む限り」
とっさに出ていくことを考えるが。圭介に同じ予算でまともな住居が見つかるとは到底思えなかった。
最悪……。
なんとか拒否する方法はないのだろうか。しかし、さっきみたいに金縛りで自由を奪われたらもうどうしようもない。自分には金縛りを解く力もないし。
「あ、そういや、お前の名前なんなの?」
青い顔をして呆然とする圭介など全く気にもせず、幽霊男が聞いてきた。
「……圭介。一ノ瀬圭介」
条件反射で素直に答えてしまう。
「圭介ね。俺の名前も知りたい?」
「別に……」
「なんだよ。冷たいじゃん。名前知っといた方が便利だろ? お互い。俺は樹」
「たつき……」
「そう。そしたら、これからよろしくな、圭介くん」
そうわざとらしく言って樹がニヤッと笑った。その小憎たらしい男前の笑顔にきーっとなりつつ、圭介はこの先の自分の大学生活を思い途方に暮れた。
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