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第2話 ①
バイトで疲れた体を引きづって家路に着く。時刻はもう真夜中だった。
大学生活が始まって約3ヶ月が経とうとしていた。授業にはもうすでに慣れ、友達も何人かできた。しかし、圭介の日常は、友人たちのようにサークルに合コンにと大学生活を謳歌する生活とはかなり遠かった。
めちゃめちゃ疲れたぁ。
人通りの少ない道を歩きながら溜息をつく。
貧乏学生の圭介の日常。平日はほぼ毎日居酒屋で閉店までバイトをし、週末も割のよい日雇いバイトをしながらほぼ一日中働く。
そして。
アパートに着き、鍵を取り出して玄関を開錠すした。力なく扉を開いて、靴を脱ぎ、リビングへと向かうと。
「お帰り」
「お帰り圭介くん」
勝手にテレビが点けられ、寛いだ状態の男女に迎えられた。
リビングの小さなテーブルには、圭介が楽しみにしていた貰い物のちょっと高級なプリンの空き容器が置かれていた。いや、正確には、空いてはいない。プリンがもう見た目おいしそうではないパサパサの状態になって収まっていた。
「……おい。誰が俺のプリン食っていいって言った?」
「え? だって、うまそうだったし」
そう悪びれる様子もなく、寝転がったまま樹が答えた。思わずキレる。
「はあ?? うまそうだったし、じゃねえよ! 大体、お前、腹減らねえだろうが!! 幽霊だろうが!! 死んでんだから物食うんじゃねえよ!! この、貪欲ブタ野郎!! 俺のプリン返せ!!」
「やだ~圭介くん。そんな乱暴な言葉使い。いつもの圭介くんの方が可愛いのにぃ」
「ちょっと、亜紀さんは黙っててくれる?」
「え~いいじゃん。仲間に入れてよ~」
「…………」
慣れたつもりではいた。不本意ながら、このアパートに憑く地縛霊と同居を始めて3ヶ月。最初から胡散臭い奴だったし、性格の悪さもにじみ出ていた。だけど。
ここまで嫌な奴だとは思っていなかった。
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