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第3話 ①★

 蒸し暑さが全く収まる気配のない真夏の夜。まるでサウナのような自宅のベッドの上で圭介は小さく声を上げた。 「あっ……」  じんわりと半裸の体に汗が滲む。そのじとじととした汗を気にする余裕もなく、絶え間ない快感が圭介を襲った。先ほどからずっと、ただ胸だけを攻められていた。例の同居人に。 ベッドに座り込んだ圭介の後ろから、手首より先が有体化した半透明な腕が伸びてきて、圭介の乳首を執拗に弄んだ。 「なあ……あっ……俺、もう……」 「もう、何?」 「だから……んっ……はっ……アソコがヤバいんだけど……」  そう樹に訴えると、肩越しにひょいっと樹の顔が覗いた。じっと圭介の下半身を見る。圭介のボクサーパンツに収まっているアソコはもうはち切れんばかりに大きくなっていた。 「……すげぇ脹らんでんな」 「そりゃ、こんだけ焦らされたらこうなるだろ……あ……んっ」  樹はじっと圭介のアソコを眺めながらも両手の動きを止めなかった。 「ちょっとぉっ……ほんと……あっ……限界なんだってぇっ」  半分キレて樹に訴えると、樹がようやく動きを止めてニヤリと笑って聞いてきた。 「触って欲しい?」  悔しいながらも素直にこくこくと頷く。 「だーめ」 「はあっ?? てめぇっ、いい加減にしろよっ。それなら、金縛り解け! 自分でやるからっ!!」 「そんなん、もっとダメだって」 「なんで??」 「自分でやるのと、俺がやるのじゃ感度が違うし。生気の質、変わってくるから」 「…………」  あまりの自己中さに閉口する。出会ったその日から性格最悪なのは分かっていたが。こういう時、少しでも樹に心を許しかけている自分を心底後悔するのだった。  しかし。だてに数ヶ月間樹と同居(不本意ながら)してきたわけではない。  そっちがそう出るなら。 「……家出してやる」 「……は?」 「このまま乳首攻めで焦らすんだったら、家出してやる」 「……マジで言ってる?」 「言ってる」  見つめ合いながらしばらく沈黙が続いた。

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