31 / 132
第3話 ③★
「はっ、あっ、あっ、きもちいっ……あっ」
そこからはあっと言う間だった。うますぎた。頭の芯が痺れるような感覚があって、何も考えられなくなった。快感が体中を駆け巡って、圭介はあっさりと果てた。
もの凄い脱力感と共に金縛りが解けた。樹が自分の欲を口で受け止めてそれをゴクリと飲み込む姿に驚いて声を上げる。
「え?? 今、飲んだ??」
「飲んだ」
「俺のなんか飲むなってぇ……ていうか飲めるもんなの? 幽霊なのに??」
「ああ……欲は別。生気がめちぇめちゃ入ってるし。ちゅーか生気そのものみたいなとこあるから。出る時に取り込める」
「……なんか、都合がいい仕組みだな、それ」
「まあ、霊界のご都合主義ってことで」
樹と会話をしている内に、急激に眠気が襲ってきた。体が汗でベタベタするのでシャワーでも浴びたいところだが、もう動くのもだるくなっていた。
大学も夏休みに入って、学生ならさぞのんびりとした楽しい毎日を送っているのだろうが、圭介の場合はそれに限らなかった。このチャンスにできる限り学費を稼いでおかねばならない。
いつもの居酒屋のバイトに加え、昼間できるバイトをほぼ毎日入れて働きまくっていた。くたくたになって帰ってきた後、いつものように樹に生気提供するために半分抱かれる日々。相変わらず最後まではされていないけど。
ここまでは普通の休みとそれほど変わりはないのだが。
1つ違うのは。暑くて長い夏休みは、電気代を惜しんで滅多にクーラーを点けない圭介の体力を容赦なく奪っていくということだった。そして悔しいことに、幽霊の樹はそんな地球の都合に一切影響を受けないのだった。
「たつき……俺、もう、寝る……」
「シャワーは?」
「もう……そんな気力……ない……」
「圭介?」
樹が自分を呼ぶ声がやけに遠くに聞こえるな、と思ったのが最後。気絶するように圭介の意識は唐突に途切れた。
ともだちにシェアしよう!