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第3話 ⑤

「亜紀さんは?」 「さっき出てった」 「そうなんだ……。なんか悪いな……。一晩中看病してもらって」 「気にすることないんじゃね? 俺ら、寝ないし」 「だけど……」 「圭介に何かあると俺も困るけど、亜紀もなんやかんやでお前のこと気に入ってるからいなくなるのが嫌らしい」 「そうなの?」 「からかうと可愛いんだと」 「……なにその理由……」  まあ、でも。今度、亜紀さんに会ったらちゃんとお礼を言わなくては。 「それより、飯食えよ。体力つけねぇとまたバテるぞ」 「ああ、うん。ありがとう」  起き上がって顔を洗ってからリビングに戻ると、早速朝食をいただいた。相変わらず樹が作る料理はうまかった。  うまっ!と夢中で掻き込んでいると。じっとこっちを見る樹の視線を感じた。 「なに?」 「……お前さぁ。そんなに金、ないわけ?」 「ないよ。言ったよな? 俺の家庭環境」 「そうだけど。奨学金貰ってんだろ?」 「でも生活費とか要るし。あと、少しだけど仕送りもしてるし。実家に」 「お前んちの家族って他は何で生活してるわけ?」 「ばあちゃんの年金と、母親のパート代」 「家は持ち家なんだろ?」 「まあ……でも、ローン残ってるしな。ほぼ、父親の生命保険で返せたけど」 「ふーん……」 「まだ弟も妹も働ける年齢じゃないし。バイトはしてるみたいだけどたかが知れてるし。俺が少しでも助けないと、ギリギリだから」 「……だからお前もぶっ倒れるギリギリまで働いてるってこと?」 「まあ……」 「……それ止めてくんない?」 「は?」  なんでそんなことをこいつに言われなくてはいけないのか。  圭介は不機嫌な顔全開で樹を見た。 「なにそれ。お前に関係ないじゃん」 「関係ある」 「なんでだよ?」 「お前が疲れすぎているせいで、生気の質が下がってきてんの」 「……質?」 「そう。精子とかと一緒でさ。ストレスとか疲れとか、製造元がそういうのに影響されると元気がなくなるわけ。生気も」 「はあ……」 「だから、俺にとっても問題なわけ」 「いや、でも、そんなこと言われても、働かなきゃ俺自身もやばいし」 「……金ができればいいわけ?」 「え? まあ……金があればこんな働かなくてよくなるけど……そんなの無理な話だし」 「……無理ではない」 「は?」  樹の顔を訝しげに見ると。自信に満ちた樹の目をぶつかった。 「まあ、任しとけ」

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