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第3話 ⑦

「あ、亜紀さん、久しぶり」 「こんばんは~」  バイト先の居酒屋勤務が終わって控え室で着替えていたところに、ふらふらと亜紀が現れた。亜紀は浮遊霊なので色々なところに出没するのだが、どうやら圭介のバイト先はお気に入りの場所のようで頻繁に見かけるようになった。 「圭介くんが最後?」 「うん。今日は店長が用事あるって急いで帰ったから。俺が戸締まり頼まれて」 「そっか~。じゃあ、一緒に帰ろ♥」 「いいけど。あ、そうだ。この前は俺が死にそうな時に助けてくれてありがとう」 「ああ、全然。病気の人ほっとけないから。職業病で」  話しながら戸締まりを済ませて店を出る。ここからはうっかり亜紀と普通に話すと周りからは独り言を話す怪しい奴に見られるので気をつけなければならない。なるべく前を真っ直ぐ見ながら横にいる亜紀に小声で話しかける。 「そういや、最近亜紀さんうちにあんま来ないね」 「まあねぇ。だって、今もう1人いるでしょ?」 「それ、岡田くんのこと?」 「そう」 「亜紀さん、岡田くんのこと知ってるんだ」 「幽霊ネットワーク凄いからねぇ。樹の知り合いだし」 「……そういや、樹って大学生だったんだよね?どこの大学か知ってる?」 「あれ? 圭介くん、知らなかったの? あいつ、東大だよ」 「……マジで?」 「うん、マジで」  樹のあのチャラいというか、圭介に対しては性欲むき出しの感じしかない雰囲気から、そんな頭のよろしい大学に通っているとは想像できなかった。 「信じられないんだけど……」 「まあ、素行が悪いからねぇ。真面目さの欠片もないし。顔はいいのに頭がいいイメージはなかなかつかないかもね」 「ねえ。亜紀さんって樹とどうやって知り合ったの?」 「クラブ」 「そうなんだ」 「そう。お互いセフレ探してて、なんとなく気が合ってさ。年下の男もたまにはいいかなぁなんて」  あ、私、永遠の20歳だけどね。そう言ってふふっと笑った亜紀を見る。  亜紀だって幽霊じゃなくて生きている人間として普通に歩いていたら、きっとすれ違う男どもが振り向くぐらいの容姿の持ち主だ。こんなに綺麗な人なのに。彼氏とかいなかったのだろうか。

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