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第4話 ④

 荻は圭介の仲の良い大学友達の1人だった。圭介が貧乏学生でバイトばかりしていることを同情的な目で見てくれてはいた。それによって彼女ができないことも圭介以上に嘆いてくれていて、親戚(本当のことは言えないし)から援助が出て生活が楽になったと告げた途端、圭介に彼女を作ろうと躍起になっている節があった。  そこで、ふと自分がそれほど彼女を欲しがっていないことに気づく。その理由は明らかで。 性欲的な解消は樹によって嫌というほどなされていたので、そういう意味で彼女を作りたいという欲求はなかったのだ。  しかし、精神的な繋がりという意味では、確かにもうずっと彼女がいなかったし、誰かと楽しくお付き合いをしたいなという気持ちはあった。  樹とのような利害関係が先にある体だけ(未だに最後まではされていないけど)の関係だけでこのまま生きていくのは健康的ではないとどこかで思っていることもあった。  そう、体だけの関係。  その言葉の響きになんとなく虚しくなった。 「一ノ瀬くん? 大丈夫?」  はっと我に返ると、由奈が心配そうに圭介の顔を覗いていた。 「ごめん。ぼーっとしてた」 「酔いが回り過ぎたんじゃない? もう帰った方がいいかも」 「いや、大丈夫」 「ほんと?」  そんな感じで、由奈はその後ずっと圭介を気遣ってくれていた。  良い子だな。  圭介は由奈に好印象を持った。それから1ヶ月ほどして。由奈に告白される形で2人は付き合うことになった。

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