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第4話 ⑦
「怖かった~」
「そうだね」
映画館を出て、夕飯を一緒にしようと、由奈のリクエストでショッピングセンター内にあるイタリアンの店へと移動した。お手軽な値段でピザとパスタ、前菜やデザートなどが食べ放題という学生には有り難い人気の店だった。席が空くのを待って、ようやく案内された時にはほどよく腹が減っていた。
映画の話をしながら様々な種類のピザやパスタを堪能した。由奈は、もう食べられない~、と言いつつも、ちゃっかりデザートまで平らげていた。
店を出て外へと出ると、12月初めの街はイルミネーションでキラキラと輝いていた。駅への道をぶらぶらと手を繋ぎながら歩いていると、ふと、由奈が口を開いた。
「ねえ……」
「ん?」
「……良かったら……圭介くんの家、行きたいな」
「……俺の家?」
「うん、ダメ?」
「……ダメじゃないんだけど……」
そこで、圭介はどう説明しようか迷う。正直に、幽霊の同居人がいて~とはやっぱり言えないし。
「今、めちゃめちゃ散らかってて……」
「……そう」
「うん……ごめん」
「……あのさ、じゃあ、家来る?」
「え??」
「圭介くんが良かったらだけど……」
そう言って、由奈が若干上目使いで圭介を見てきた。その意味は、もちろん圭介だって分かっている。
なぜか。そこでちらっと樹の顔が浮かんだ。しかし、即座にいやいやと頭の中で消す。
なぜ樹に遠慮しなくてはならないのか。正式に付き合っているのは由奈なわけだし。樹との関係はあくまで『奉仕』なわけで。
そう自分に言い聞かせてから、由奈を真っ直ぐ見て笑顔で答えた。
「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな」
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