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第4話 ⑧

 朝の活気が残る商店街を駅とは反対方向に歩く。いつもの川沿いなのに、自宅へと向かうその道がよそよそしく感じた。  歩きながら、昨晩の由奈との一夜を思い出していた。久しぶりの女の子とのセックスだった。由奈の体は、小柄で見た目は細く見えるのだが想像以上にグラマラスで柔らかかった。女の子特有の肌触りとふくよかな四肢。  気持ちは良かった。最近は樹にやられるばかりだったけど、自分がリードして相手の中に入っていく感覚はやっぱりそれなりに快感がある。  だけど、どこか違和感を覚えたのはなんでだろう。由奈の声がわざとらしく感じてしまったのは気のせいだろうか。それは、由奈とのセックスがそうなのか、久しぶりの女の子とのセックスがそうなのか、よく分からなかった。  玄関を解錠して中へと入る。 「ただいま」  もうすっかり癖になっている挨拶をしてリビングへと向かうと。誰の姿も見えなかった。  あれ? 「樹?」  いつも感じる樹の気配がしなかった。樹はこの場所に憑く地縛霊の類いなので、簡単にはここから離れることはできないのだが。  どこか行ったのかな?  そう思いながら荷物を置いて、着替えようとクローゼットを開くと。 「うわっ!!」  クローゼットの隙間の中で樹が座ってこちらを見ていた。じっと幽霊のように(幽霊だけど)青白い顔で圭介を見上げている。 「ちょっ! どうしたんだよ??」 「……ビックリした?」 「ビックリしたけど……」 「……俺がいなくなったと思った?」 「え?? あ、うん、どこか出かけてるのかと思ったけど……」 「……寂しくなった?」 「いや……そう思う暇もなかったから……」  そう答えると、あからさまに不機嫌な顔をして立ち上がるとクローゼットから出てきた。そのままずかずかとベッドへ移動し、ごろんと上に転がった。とげのある口調でぼそりと呟いた。 「金ができた途端、朝帰りとはな」 「……どういう意味?」  その言い方に圭介もムッとして尋ねた。

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