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第4話 ⑨
「急に遊び人になっちゃって。一体どこでヤりまくってきたわけ?」
「……そこはお前に関係ないだろ。大体、自分の金しか使ってねぇし。俺が誰と一緒にいようが、お前が口挟む権利ないじゃん」
「その自由になる時間を作ったのは俺だろ」
「……頼んだ覚えないし。そんなに気に入らないなら、アプリ開発なんて止めればいいじゃん。稼いだお金もどっか寄付するから」
「はあ?」
そこで、お互い何も言葉を発さずしばらく睨み合っていた。が、ふと大学へ行く時間が迫っていることに気づいた。樹に背中を向け、着替えながら手短に報告する。
「俺、彼女ができたんだよ。昨日は彼女のとこにいた」
「……ふぅん」
「だから。時々留守にすることはあると思うけど。心配しなくてもお前への生気提供には支障がないようにするから。それでいいんだろ?」
「……まあな」
「だったら、問題ないだろ? これ以上、口出すの止めてくれる?」
着替え終えて、樹の方へ振り向いた。圭介のつっけんどんな言い方にさぞかし腹を立てているだろうなと思ったのだが。
「…………」
予想に反して、樹はなんとも言えない悲しそうな顔をしていた。
「樹……?」
樹は圭介にその表情を見られたくなかったらしく、圭介を避けるように背中を向けた。
「もう行けよ」
「…………」
返す言葉が見つからなかった。完全に圭介を拒絶している樹の透けた背中をどうしようもなく眺める。あんな樹は初めて見た。
「……行ってきます」
結局、圭介はその一言だけかけて自宅を後にした。
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