50 / 132
第4話 ⑪
あれから1週間。樹には完全に無視されていた。姿も圭介の前ではほとんど消していた。気配で樹がいるのは分かるのに見えない。
たまに姿を現した時に圭介が話しかけても無視か、必要最低限のことしか話さなかった。
樹に迫られることもなくなった。どうやって生気を保っているのか心配になった。このままだと、生気がなくなって消えてしまうのではないか。樹がいなくなってしまうのではないか。
そう思うと、なんとも言えない気持ちが圭介の心を揺すぶった。
『寂しくなった?』
そう圭介に尋ねた樹の言葉を思い出す。
そうか。自分は、樹がいなくなってしまったら寂しいのだ。そう自覚した。自覚したところで、樹との関係を元通りにすることは必要あるのだろうか。だって。どう考えても圭介には落ち度はないのだし。
「喧嘩したの?」
居酒屋のバイトが終わった帰り道。なんとなくこのまま帰るのが嫌で、帰宅途中の公園に寄って缶コーヒーを飲みながらベンチに座っていたのだが。そこに亜紀が現れた。
「喧嘩って言うか……。樹が勝手に怒ってんだけど……」
そこで、亜紀に先日起きた樹との言い合いについて話をした。
ともだちにシェアしよう!