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第4話 ⑯★
嫌だっ。
そんな圭介の心の叫びも届かず、樹が圭介の上に覆い被さってきた。
「……今日は、容赦しねえから」
小さく呟かれて背筋がぞっとする。
乱暴に唇が塞がれた。舌も自分の意志では動かせないので、ただされるがままだった。
樹の舌が圭介の口内を無遠慮に舐め回す。反応のない圭介の舌に舌を絡ませてただ好き勝手に吸い上げる。全く気持ちよくないキスだった。
その内、キスを続けながら樹の手が圭介の服の中へと滑り込んできた。ひんやりとした手の感触に圭介の体が思わずビクリと反応した。
乱暴なキスと愛撫ではあったが、長い間、樹の手と舌に弄られ続けていた圭介の体はいつも通りの反応をし始めた。
乳首を指先でカリカリと引っ掻くように攻められる。乳首が転がされる度に圭介の体が熱くなっていった。両手でしつこく両乳首を弄ばれながらくちゅくちゅと圭介の口から唾液が零れるぐらいに口内を掻き回された。
ふと、樹が唇を離して呟いた。
「……やっぱ、声がねえと盛り上がんねぇな」
そう言った途端、圭介の声から苦しげな息が吐き出された。
「はっ……あっ……」
両手の動きを止めないまま、じっと圭介の顔を見下ろす樹と視線を合わすまいと目を瞑った。そんな抵抗する気持ちとは裏腹に、声はどんどん上がっていく。
「あっ……んっ……」
「いいじゃん。もっと声派手に出せよ」
「嫌だっ……」
「……なんで? 抵抗したいの?」
冷静な声でそう聞かれて、段々と悲しくなってきた。こんなのは樹じゃない。こんなのは奉仕でもセックスでもなんでもない。本当に、ただ犯されるだけの行為だ。
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