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第5話 ①
はあっ、と息をはく。白い靄がゆっくりと上がって、音もなく消えた。その様子を、圭介はただぼやっと見上げていた。
すっかり冬模様となった大学の庭で立ち止まり、寂しげに佇む木々たちを眺める。
「圭介っ」
遠くから名前を呼ばれて振り返る。由奈が笑顔で走り寄ってきた。
「ごめん、待った? ちょっと、講義が終わるの遅くてさ」
「全然。俺もさっき終わったとこだから」
「今日さ、何食べたい? バイトないでしょ?」
「何でもいいよ。由奈の料理、何でも美味いし」
「え~、ほんと?? 嬉しい」
ニコリと由奈に笑いかけられて圭介も笑い返す。そのまま一緒にスーパーで買い物を済ませて、由奈の住むマンションへと向かった。
由奈のところで居候し始めて、1ヶ月ほど経った。自分のアパートを逃げるように出てきた時は、とりあえず荻のマンションへと転がり込んだ。
それから1週間ほどお世話になっていたのだが、荻にも彼女がいてほぼ同棲状態だったので、邪魔をして申し訳なく思っていたところ、それなら家に来なよ、と由奈の方から誘ってくれたのだった。
まだ付き合い初めてそれほど日数も経っていなかったので同居することに抵抗はあったのだが、かと言って他に世話になれるところも思いつかず、結局由奈のところに住ませてもらっている。
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