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第5話 ⑤★

 もしかしたら。もしかして。と、ある考えが自分の頭の中をぐるぐる回る。だけど、それをそうだと結論づける勇気がない。認める勇気がない。認めてしまえば、自分の全てが変わってしまうような気がするのだ。それが怖かった。  自分だって分かっている。このままじゃいけない。このまま樹から逃げ続けるわけにはいかない。  あのアパートをどうするかも含めて、考えなければならないことはいっぱいあるのに。 「あっ……ああっ……圭介っ。イっちゃうっ……」  耳元で大きく叫ばれて、はっと我に返った。その声を合図に抽送を早めた。圭介にも快感の波が訪れる。  由奈が頂点へ達した後、ほどなくして圭介も果てた。少し荒い息をはきながら由奈がニコリと笑いかけてきた。圭介はそれに軽くキスを落として応える。 「……気持ちよかったね」 「ん……」  もう少しだけ。こうして、現実逃避していたい。樹のいない、樹と関係のない世界に。自分を置いておきたい。  どうせ、長くは続かないのだから。

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