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第5話 ⑦
「……圭介くん、変わったね」
「え?」
「なんか……可愛くなくなった」
「……いや、もともと可愛くないし」
「彼女の影響?」
「……どういう意味?」
「……圭介くんさぁ、本当に彼女のこと好きなの?」
「……なんで?」
「だってさぁ、全然盛り上がってないじゃん? 付き合い始めたばっかなのに」
「そんなことないよ。喧嘩もないし。少なくとも俺は彼女に不満もないし」
「……ふーん」
亜紀が意味深な声音を出した。
「でも、エッチもつまんなそうじゃん」
「……ちょっと……もしかして……亜紀さん……覗いた??」
「えー、まあねー。圭介くん元気かなーって思って、時々ねー」
「時々って……1回じゃないの??」
「まあ、いいじゃん、そこは。でもさー、圭介くんも彼女もそんなに燃えてるように見えないよ」
「……彼女も?」
「あ、圭介くんが燃えてないのは認めちゃうんだ」
悪戯っ子のような笑顔で亜紀がツッコんだ。
「……そこはいいから。彼女も(・)ってどういうこと?」
「私、女だしさ。分かるもん。女が本気で声出してんのか出してないのか」
「…………」
「あ、でも、安心して。圭介くんが下手とかそういうことじゃないよ、たぶん」
「もしそうだったら、俺、めっちゃ、凹む……」
「違うって。彼女の問題だよ、それ」
「彼女の?」
「そう。……圭介くん」
「何?」
「あの子、圭介くんが思っているようなそんないい子でもないよ」
「……え?」
その言葉の意味が分からず、亜紀をじっと見つめ返す。
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