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第5話 ⑨
「障害なんて、後から考えたらいいじゃん。とりあえずくっついちゃえばいいじゃん」
「そんな無茶な……。第一、俺、認めてないし」
「怖いからでしょ?」
「…………」
「でも、それで二の足踏んでたら後悔するよ」
「…………」
亜紀がじっと圭介を見つめる視線を正面から受け止められず下を向く。
「………もう言っちゃうね。今日、圭介くんの彼女ってどっか行ってるんでしょ?」
「ああ……友達のところに泊まりに」
「そんなの嘘だよ」
「え?」
「彼女は別の男と会ってるの。しかもそっちが本命」
「……嘘……」
「嘘じゃない。私はしかと見てるから。っていうか見に行ったから」
「……じゃあ、なんでわざわざ俺と付き合うわけ?」
「本命さんは既婚者だから」
「……不倫ってこと?」
「そう。だから、会いたくてもほとんど会えないし、そのうっぷんを圭介くんで晴らしてるってわけ」
「そう……なんだ」
「……淡々としてるんだね」
「……いや、ショックにはショックだけど……」
「ほら。もうはっきりしてるじゃん。圭介くんはその彼女のことは好きじゃないんだって」
「…………」
「そんで、彼女の方もね」
由奈が不倫相手と会っているとは思ってもみなかったけど。亜紀の言う通り、驚きはしたけれど、それほどショックがなかったことは事実だった。
逆に少しほっとしたぐらいだ。由奈への気持ちを誤魔化し続けてきた後ろめたさみたいなものが半減した気がして。
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