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第5話 ⑪

 翌日になっても、圭介の頭の中は樹のことでいっぱいだった。一晩中考え過ぎてほとんど眠れていなかった。朝方になって少しうとうとし始めたと思ったら、はっと目が覚めた時にはもう昼過ぎだった。  今日は大学を休もう。バイトもない日だったのでどうせなら1日のんびりしてやろうと決めた。  のそのそとベッドから起き上がって、朝食を作る。トーストにジャムを塗ったものを食欲のない胃に無理やり詰め込んだ。  その間も、樹のことが頭から離れない。 『段々弱ってきてて……たぶんもう限界に近いよ』 『……たぶん、もう1週間も持たないと思う』  昨晩の亜紀の言葉がぐるぐると回る。  例えば。自分の気持ちを素直に認めたとして。樹の元へと戻ったとして。もし樹に拒否でもされたらどうしたらいいのだろう。  亜紀は樹が圭介に特別な感情があると断言するけれど。あの、嫉妬に満ちた樹の視線は自分に向けられたものだったのも分かるけど。  だからと言って、樹が圭介と結ばれたいと望んでいるかどうかは別ではないか。  先のことを考えると、圭介と同じように樹だってそこについては二の足踏んでいる可能性だってあるのではないか。

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