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第5話 ⑫

 そこまで考えて、はっきりと自覚する。  そうか。自分は怖いのだ。樹と一緒になるのが怖いというより。樹が圭介を受け入れるかどうか分からないことが怖いのだ。樹からはっきり気持ちを聞いたわけではない。全て、状況と亜紀情報による推測なわけで。だから。 『圭介』  整った顔で軽く笑いながら自分の名前を呼ぶ樹の顔が浮かぶ。  自信がないのだ。今まで圭介が会ったこともないような綺麗な顔のあの男に、自分が愛されるわけがないと、そう思ってしまう。  朝食の皿を洗って、きゅっ、と蛇口を捻った。水の音が消えて、しん、となる部屋を振り返る。由奈のいない、由奈の部屋。  急に。この部屋がとてもよそよそしく感じた。ここは、自分のいるべき場所じゃない。そんな風に自分の中の何かが感じている。  だからと言って、帰るべきところにはまだ帰る勇気はないし。  はあ、っと溜息をつく。気分転換にちょっと外に出よう。そう思い、財布だけを持ってマンションを出た。

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