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第5話 ⑰

「樹くんを色んな意味で救えるのも圭介くんだけです」 「だけど……」 「もちろん、大事なのは圭介くんの気持ちです。人助けのために自分を犠牲にすることはないとは思います。だけど、もし、それが……圭介くんの望むことで、圭介くんが本気で樹くんを好きだと思えるのなら……少しだけ勇気を出してくれたらいいななんて思います」 「勇気……」 「はい。人を愛して愛される勇気」 『ちゃんと自分の気持ちに向き合って、よく考えてね』  亜紀にそう言われたことを思い出した。そこで気づく。  自分は自分の気持ちに向き合うことすらしてなかったなと。自分の気持ちを認めるのが怖くて。それを押し切るのが怖くて。それと同時に、樹からの気持ちを受け入れる余裕もなくて。最初から逃げていた。でも。  自分は一体どうしたいのだろう。  そんな風に、自分に問いかける。  分かっていた答えがはっきりと浮かび上がる。  それを今、勇気を出して受け止める。

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