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第5話 ㉑★

「樹……ごめん」  樹の耳元でゆっくりと自分の想いを吐き出した。 「……逃げ出してごめん。本当は、分かってたのに。自分の気持ちも。だけど……怖くて。それを認めるのも、この先抱え込んでいくのも……それに……樹がそれに応えてくれるかも自信がなくて……それで……樹が無理やりしてきた時……樹が別人みたいで怖くて……受け入れる勇気もなくて……その……だけど……やっと自分の気持ちと向き会えたというか……覚悟を決めたというか……」  そこまで伝えて、樹を見る。相変わらず目を閉じたまま無反応だった。もしかするともう手遅れなのかもしれない。もう、圭介の言葉は届かないのかもしれない。  泣きそうになる自分を必死でこらえた。 「なあ……目を覚ましてくれよ……俺……まだ、お前に気持ち伝えてない。お前の気持ちも聞いてない」  もう一度、お前に触れたい。 「……好きだ」    そう小さく呟いて、樹の唇に自分の唇を重ねた。当たる感触はなかった。それでもこうしていたい。  圭介は目を閉じてそのまま唇を重ね続けた。

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