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第5話 ㉓★

 その優しい視線に圭介の鼓動が早くなる。 「……なんだよ」 「……帰ってきたんだな」 「……俺の家なんだから、当たり前だろ」 「……もう帰ってこないかと思った」 「…………」  樹が弱々しく笑った。こんな顔を見るのは初めてだった。 「圭介……」 「……何?」 「……悪かった」 「…………」  樹が何に対して謝罪しているのかはすぐ分かった。最後に会った時。あんな風に圭介と関係を持とうとしたこと。圭介に酷い扱いをしたこと。 「……もういいから」 「…………」 「その代わり……。見せてほしい」 「……何を?」 「樹の本当の気持ちを」 「…………」 「そうしたらもう。俺は迷わないと思う」 「……いいのか?」 「何が?」 「今は……止められる自信がない」  じっと欲の含んだ瞳で見つめられる。その瞳をしっかりと見つめ返す。ニッコリと笑った。 「止めてほしくないんだけど」  一瞬、きょとんとした顔をした樹がふっと笑った。 「まだ万全じゃないから、ゆっくりになるけど」  止めないから。そう呟いて、樹が再び圭介に唇を重ねてきた。

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