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第5話 ㉛★
そこでふと疑問に思う。抱き合ったまま、樹に尋ねる。
「なあ……樹はイけるんだよな?」
「イけるよ」
「だけど……その……精子は出るわけ?」
「出ない。死んでるから」
「じゃあ……さっきの温かい感じは何?」
「生気。だから何回もはイけない。せっかく取り入れた生気が出ちまうから」
「そっか……だけど……気持ちはいいんだろ?」
「もちろん」
「なら良かった」
そう言って、樹にニコリと笑いかけた。すると、なぜか真剣な顔で樹に見つめられる。
「樹……?」
「……圭介」
「ん?」
「ほんとに……いいのか?」
「…………」
何を今更、と思う。きっと、これは圭介が避けられなかった運命なんだ。幽霊が見えるようになって。樹と出会って。こうして樹と一緒になって。相手は幽霊だし、この先一体どうなるかなんて想像もつかないけれど。
『障害なんて、後から考えたらいいじゃん。とりあえずくっついちゃえばいいじゃん』
亜紀の言う通りだな、と思う。うだうだ今考えても、もうお互い、少なくとも圭介は樹に惚れてしまったのだからしょうがない。
樹をじっと見上げる。ちゃんと伝わるように、目を見て、はっきりと伝えた。
「……当たり前じゃん」
樹が泣きそうな顔をした。いつもは絶対見せない顔。それを隠そうともせずに、圭介を見つめ続ける。
「圭介」
「何?」
「……愛してる」
軽く目を見開いて樹を見返した。しばらく2人して何も言わずに見つめ合う。
ふとどちらからともなく笑った。ゆっくりと樹の顔が近づいてくる。
その柔らかい樹の唇を、気持ちごと全て受け止めた。
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