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最終話 ⑥
一通り舌を絡ませ合うと、唇を解放した。圭介は物足りなさを感じる。キスだけじゃ足りない。もっと、樹が欲しい。1分1秒。余すことなく。ずっとずっと樹と抱き合っていたい。そんな強い欲望が圭介を支配するようになったのはいつからだろう。
樹と付き合うようになって(幽霊との関係が付き合うという表現が正しいかは別として)、樹を知るほどに、樹と抱き合うほどに、どんどんと樹にのめり込んでいく自分を感じていた。
空いている時間は全て樹と過ごしたい。そう思い出したら、バイトも大学生活も圭介にとって何の意味もなくなっていった。
幸いにも、樹が岡田と始めたビジネスは順調で、今ではもう圭介がバイトをしなくても、この先、圭介の家族が問題なく生活するには十分過ぎるほどの金額が貯まっていた。
圭介はバイトを続けるつもりでいたのだが、樹に圭介が大学に行って昼間もいないことが多いので夜はなるべく一緒にいてほしいと言われてあっさり辞めた。
最初は、自分が使っている金が自分の稼いだ金ではないことに申し訳なさがあったのだが、夜、樹とのんびりと過ごせる時間を手に入れた今は、これで良かったのだと思えるようになった。感謝の気持ちを忘れないように有り難く使わせてもらっている。
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