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最終話 ⑭

 そこで亜紀が考えるような表情をして黙った。それから、じっと樹を見て再び口を開いた。 「1つは分かる。っていうか、その方法しかないよね。幽霊仲間に色々聞いて回ってたんだけど。それ以外、樹たちが一緒にいられる方法は見つかんなかった」 「……お前、それで最近顔見せなかったのか」 「まあね。ちなみに岡田にも調べさせたけど、一緒だった」  ふわりと移動して、亜紀は圭介のベッドへと腰かけた。そこから台所の樹へと話を続ける。 「樹たちが一緒にいるには、お互い成仏するしかないじゃない? 同じタイミングで。それで、あとは天に運を任せる」 「…………」  その通りだった。もし、圭介と一緒に同じように時を重ねて、同じように生きていくには。圭介が死に、同時に樹も成仏する。生まれ変わって再会する。それしかない。  ただその後のことは全て賭けになる。どこに生まれるか、どんな風に育つか。性別や容姿も。何もかもお互いのことは知らないまま転生することになる。生前の記憶もリセットされる。まれに記憶が残っていたりするらしいが、それも方法があるわけでもないし、可能性は低い。それでも。この方法でしか、圭介の傍にいられる術がない。 「それ以外の選択って何?」 「……俺には、圭介がこのまま俺と成仏することが本当に幸せかどうか自信がない」 「…………」 「もしかすると、こんなのは一時のもんで、この先、圭介が生きている誰かと会って友達や家族と一緒に人生を送る方が幸せなのかもしれない」 「樹……あんた、まさか……」 「それも1つの選択だろ?」 「でも……どうやって……」 「もう目星は付けてある。このアパートによく来る配達員で丁度良さそうなのがいる。俺の許容範囲の容姿だし、憑いて移動できるだけの強い生気も持っているみたいだしな」 「……地縛霊じゃなくなるってこと?」 「まあ……。俺、たぶん、もうここからいつでも移動できるわ。ここに未練ないし。ここに留まっていた理由も分かった」 「……何よ?」 「教えねえよ」 「何でよ??」 「言いたくないから」 「何それ。ほんと、勝手」  亜紀がふくれっ面をして樹を睨んだ。

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