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最終話 ⑮
「ていうか。その選択はマジでちゃんと考えた方がいいよ。圭介くんのためだと思うなら、余計そう」
「……分かってる」
「どうだか。樹って恋愛系のことになるとなんか疎いし」
「は?」
「とにかく。圭介くんが悲しむような選択はしないでよ。私、圭介くん大好きなんだから」
じゃあね、とふくれっ面のまま亜紀が唐突に消え去った。
なんだ、あいつ。何、怒ってんだ?
そう思ったが、まあいいか、と再び料理に集中する。
あまり時間が残されていないのは確かだ。圭介のあの衰弱した様子からして、もうそれほど圭介の命も持たないだろうと思う。早く、どうにかしなければならない。なのに、いくら考えてもどちらの選択にしていいのか結論が出ない。
焦る気持ちが樹を苛々させる。
『樹』
屈託なく笑う圭介の顔。
どうしようもなく、圭介に会いたくなった。
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