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最終話 ㉙

「ごめん……」  手を伸ばして指先を有体化させた。そっと圭介の髪を梳くように撫でる。その瞬間、ぴくりと圭介の体が動いた。薄らと圭介の瞳が開いた。焦点の定まらない視線を漂わせていたが、やがて目線がこちらに向いて樹を捉えた。 「圭介……」  圭介は少し驚いたように目を開いた後、薄らと微笑んだ。 「樹……。また会えた……」 「ごめん……」 「謝るなよ……俺も悪いんだから……」  圭介の頭に添えていた手をそっと頬に滑らせた。親指で優しく頬を撫でる。圭介がゆっくりと左手を動かして、樹のその右手に重ねた。  しばらく見つめ合ったままじっとしていた。  圭介がゆっくりと顔を横に向けた。 「岡田くん。ごめん、ちょっと樹と2人にしてくれる?」 「あ、はい。分かりました」  岡田はそそくさと立ち上がると唐突に姿を消した。それを確認してから、圭介が樹を見た。

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