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最終話 ㉛
浴室へ圭介を支えながら移動し、服を脱がせるとバスタブの縁へ座らせた。シャワーを出して、頭から足先まで綺麗に洗ってやる。痩せ細った圭介の体が痛々しい。
「俺……おじいちゃんみたいだな」
ふっと笑って圭介が呟いた。
「これじゃ、さすがに樹もエロい気分にならないか」
「そんなことない」
シャワーを圭介の体に当てながら、圭介に軽く唇を重ねた。ちゅうっ、と圭介の唇をゆっくりと吸い上げながら離れる。潤んだ圭介の瞳とぶつかった。
「どんな圭介にも欲情する」
「そっか……」
風呂を出て、短パンとTシャツに着替えさせてからまたベッドへと移動した。ベッドに2人で並んで腰を下ろす。机にあったペットボトルの水を口に含んでから、圭介が樹へと顔を向けた。
「亜紀さんが言うには、俺、たぶん、もう1回、誰かに強く生気を吸われたら死んじゃうだろうって。衰弱死っていうの? そんな感じ」
「そうだな……」
それは、樹から見ても十分理解できた。
「で、どうせ死ぬんだったら、お前とヤって死にたい」
「……だけど……」
「このまま生気がなくなっていくのをだらだら待つより、樹に生気を一気に吸い取られて、死にたい」
「…………」
「俺が死んだらすぐ樹も成仏できるんだろ?」
「……たぶん」
「樹が後始末をする時間はないかもしれないし。俺が死んだ後のことはもう亜紀さんと岡田くんに頼んであるから」
「圭介」
「ん?」
圭介の目を探るようにじっと見る。
「……本当にいいのか?」
「……いいよ」
「後悔……しないか?」
「するわけないじゃん」
圭介が満面の笑顔で続けた。
「これでずっと樹と一緒なんだから」
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