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最終話 ㉟★
やがて。どちらからともなく唇を離した。目の前の樹の瞳を覗くと、樹が見つめ返してきた。
「……挿れる?」
「うん」
「大丈夫か?」
「大丈夫」
意識が少し混濁してきていた。絶頂に達する度に、生気が自分の体から抜けていくのが分かった。たぶん。もう一度イけば、自分はこの世から決別することになるだろう。それが分かっているから、樹も躊躇しているのだ。
それでも。最後の最後まで樹と抱き合っていたい。繋がっていたい。その自分の願いを、樹はきっと理解してくれる。
「樹」
「……ん?」
「頼む」
「…………」
視線を絡ませ合う。真剣な樹の顔。やっぱり男前だな、とこんな時に思う。
樹がすっとキスを落としてきた。触れるだけのキスをして、圭介の足側へと下がっていった。ぐっと両脚を掴まれて上げられる。
「挿れるぞ」
「うん」
ぐっと、樹が中に入ってきた。目を閉じてその感触をじっくりと味わう。自分は樹としか経験がないけれど。きっとこの感触は、他の誰よりも最高に違いない。そう思う。
「うんっ……」
奥まで当たったのが分かった。ビクッと体が反応する。樹が慎重に動き出した。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
揺れに合わせて自然と声が出る。再び体に熱が籠もる。それと並行して、頭の中が揺れるような感覚も増していった。
気持ち良い。
熱がないはずの、樹の自身が熱い。それが、圭介の中で突かれる度に、その熱がじわじわと広がって圭介の心も温かくする。
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