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最終話 ㊱★
視界がぼやけてきた。樹の顔がよく見えない。探るように両手を伸ばした。
「樹……」
それに応えるように、繋がったまま樹がぐっと体を前に倒してきた。そのまま樹のキスが落ちてくる。
「んっ……んっ……」
舌を絡ませ合いながら、揺れ続ける。
もうすぐ終わりが来る。でも、別れじゃない。だから、怖くもないし、悲しくもない。
ビリビリとした快感がせり上がってきた。唇を離して、樹に伝える。
「樹……もう、イきそう……」
「…………」
微笑んで右手で樹の髪に触れた。2人の動きが止まる。
「なんで、そんな顔してんの?」
泣きそうな、辛そうな、愛しい樹の顔。
「笑って」
「……笑えねぇ」
「でも、樹の笑顔が見たい。また会える時まで覚えておくからさ」
すると、樹が苦笑いに近い笑顔を見せた。
「お前はなんでそんなにポジティブなんだよ」
「そうか?」
「賭けなのに。会えるかも分かんねぇじゃん」
「会えるよ」
「……その自信はどっからくるんだよ」
理由なんてない。証拠だってもちろんない。だけど、分かる。俺たちは、絶対に会える。そんな確信めいた予感がするのだ。
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