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最終話 ㊳
急激に部屋の温度が下がった気がした。
「……圭介?」
分かってはいるのに。確かめずにはいられず恋人の名前を呼んでみる。もちろん、返事はなかった。
「…………」
完全に生気が『無』となった圭介の体と繋がったまま、その体を抱き締める。幽体が出てこなかったところを見ると、無事に成仏できたらしい。
まだ薄らと圭介の体温が残っている。その温もりを逃すまいと抱き締め続ける。ずっとこうしていたかった。しかし、自分にも残された時間は少ない。
覚悟を決めて起き上がり、そっと繋がりを断った。
「……亜紀」
後ろに気配を感じた。
「……後、頼むな」
「……うん」
体が軽くなってきて、自分の気配が少しずつ薄れていくのを感じた。圭介の体温のような温かい感覚が心身を支配していく。
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