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エピローグ ②

 ここ、どこ?  見たことのない道。豆腐の青木さんも、ぱてぃしえ三木のケーキ屋さんもない。さんかく公園もない。知らないお家がいっぱい並んでいる。  どうしよう。  どこに行ったらいいのか分からない。でも、急がなきゃ。暗くなっちゃう。そう思って、走り出した。  じぐざぐじぐざぐ。道をあてずっぽうに走っていく。でも、どれだけ走っても、豆腐の青木さんも、ぱてぃしえ三木のケーキ屋さんも、さんかく公園も出てこない。  どうしよう。  走りながら涙がじわりと出てきた。  ママ。 「うわっ」  足がもつれておもいっきり転んだ。ざざっと音がして、膝小僧がずきんとした。起き上がって、膝小僧を見たら血が出ていた。  どうしよう。  涙が次から次へと出てきて止まらなくなった。  ひっくひっくと息が苦しい。 「どうしたの?」  急に横から声がして、びっくりして顔を上げた。きれいなお姉さんが僕を見ていた。 「なんで泣いてるの?」 「僕……お家に帰りたいんだけど、道が分からくなっちゃった」 「迷子?」 「うん……」  まいご、の意味が分からなかったけど、うなずいた。お姉さんはニコリと笑うと手を差し出して僕を立たせてくれた。 「大丈夫。お姉ちゃんがお家まで連れてってあげる」 「お姉ちゃん、僕のお家知ってるの?」 「知ってるよ。圭介くんのことはいっぱい知ってるの」 「そうなの?」 「うん」  いこ。そう言って、お姉ちゃんが僕の手を引いて歩き始めた。

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