130 / 132

エピローグ ③

「お姉ちゃんは、どこに住んでるの?」 「私はねぇ、いろんなところを旅してるの。だからお家はないんだ」 「旅ってなに?」 「旅行って分かる? 遠くにお出かけすること」 「うん、分かるよ。この前のお休みに、ママとパパとおんせんに行ったんだ!」 「そう。旅ってね、その旅行をずっと続けてる感じかな」 「いいなぁ。いっぱい色んなところに行けるんだね」 「そうだね」  優しくお姉ちゃんが笑った。 「圭介くん、幼稚園楽しい?」 「うん!」 「お友達たくさんいるの?」 「いるよ。幼稚園にもお外にもいる」 「そっか……。圭介くんは昔も友達たくさんいたもんね」 「え?」 「ううん。ねえ、好きな子はいないの?」 「いるよ」 「え? 誰?」 「お姉ちゃんの知らない子だよ」 「そうなの? 幼稚園の子?」 「違うよ。夢の中の子」 「夢?」 「うん。夢に出てくるの。かっこいいお兄ちゃんだよ」 「……そう。そのお兄ちゃんが好きなの?」 「うん。いっつもいいこいいこしてくれるんだよ。だから好き」 「それは……どういう好きなのかな?」 「え?」 「ううん、なんでもない。そっかそっか、良かった。覚えてるんだね。名前も一緒だしね。こんな奇跡あるんだね」  よく分からないけれど、お姉さんは嬉しそうにニコニコしていた。 「ねえ、圭介くん」 「何?」 「たぶん会えるよ、そのお兄ちゃんに。もうすぐ」 「ほんと??」 「うん。姿は違うかもしれないけど」 「ダイジョウブだよ! 僕、絶対分かるもん!」 「そうなの?」 「うん」  夢の中のお兄ちゃん。僕の好きなガンバレンジャーの赤レンジャーのお兄ちゃんより格好いいんだ。背がすっごく高くて。僕が草むらでごろごろしてる夢を見ると出てきてくれる。  大きなあったかい手でいいこいいこしてくれるんだ。目の横にぷくって黒い点が付いてて、それ何って聞いたら、ほくろだって言ってた。  ほくろのお兄ちゃん。  いつもとっても優しく笑ってくれるんだ。

ともだちにシェアしよう!