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第2話 ⑮
「で、本題に戻るけど。樹がなんで疲れてるかっていうとね。私たちにとって、有体化するのってかなり大変なの。物を動かしたり、触れたりするためにかなりエネルギーも使うんだよね。確かに樹は地縛霊の割にはレベルが高いし、力もあるけど、それでもずっと有体化してるのはきついはずだよ」
「亜紀さんもできるよね?」
「うん。でも、すっごく疲れるから、たまにしかしないよ。昼間だともっときつい。した後、回復する時間もいるし」
「……なんか……ゲームの世界みたい……」
「それだったらいいけどさぁ、回復の呪文とか使えば一発だし? でもそんなわけにはいかないから、ひたすら生気を使わないようにじっとして待つんだよ」
「それってどれくらいで回復するの?」
「使った量と、力のレベルにもよるけど。樹だったらたぶん、半日から1日かな」
「そうなんだ」
「うん、で、樹はね、圭介くんのためにご飯作ったりしてるけど。それって、相当エネルギー使ってるはずだからさ」
「……それって……」
「だから、それだけ圭介くんを大事にしてるってことでしょ? 思いやってるってことでしょ? どうでもいい奴ならそんなこと絶対しないよ」
「…………」
「だから。樹のこと、もうちょっと理解してあげてくれると嬉しいかな。あいつさ、結構苦労してきたみたいだから。死んでから変わるなんて馬鹿みたいだけど、でも、それで成仏できるならいいしさ」
「成仏って……」
「あ、もう行くね」
突然、亜紀が姿を消した。それと同じタイミングで控え室のドアが開いて、バイト仲間の1人が入ってくる。
「あれ? 圭介、1人?」
「え? ああ、うん」
「今、誰かと喋ってなかった?」
「いや、独り言」
適当に誤魔化して、会話を続けながら急いで支度をする。樹は今、1人部屋でじっとしているのだろうか、と思いながら。
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