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、
「お時間はいかが致しましょうか。
フリータイム、3時間パック、90分パックがございます。
学生ですので、それぞれ料金が2500円、2100円、1700円です」
「じゃあ3時間パックで。七瀬くんも同じでいい?」
「あ、あぁ。よく分からないからそれでいい。親に連絡するから、あと任せても大丈夫?」
依織に(無理やり)連れてこられて、初めてゲー厶とスポーツが出来る複合施設に来た。
「七瀬くん、早く荷物ロッカーに入れて」
子供のようにはしゃぐ依織に手を引かれ、俺達は色んな場所を回った。
テニス。
「あ、デッ、ングヌッ!」
「七瀬くん、ブッフハッ! なんでそんなに空振りできんの、アハハハハッ!」
結局1回も玉を打返すことが出来ず、30対0で俺の完全敗北。
バドミントン。
「フンッ、フンッ! フンヌッ!」
「ふひひヒッ、駄目だ、ツボった、ブハッ」
「笑いすぎだぞ!」
宙を何度も空振りし、俺は息切れ。
依織は俺の間抜けな姿を見て、大笑い。こちらもまた息切れ。
「フハッ、わかった。七瀬くん運動音痴なんだー!」
「ち、違う! 別に水泳とかバスケとかなら普通にできるし! 」
「じゃあ、ラケットとか道具を使うのが下手なんだ! ブフッ、ふふ 」
実は俺、ラケットを使うのが本当に下手。
玉を当てた試しがないくらい。
その後も卓球やラクロス、バッティングをやった。
けど、当たらない。本当に当たらない。
「無理。疲れた。もう時間だから諦める。こんなのあたりっこない!」
もうバッドを握る力さえ残っていない。
「えーもう少しやろうよ。せっかく来たんだし、一球くらいはさー」
依織は笑い疲れたというように俺の後ろで呑気にジュースを飲んでいる。
「フンッ!ひえっ、ほりゃぁ!」
残り時間あと15分。
「もう終わり! 」
バッドを返しに行こうとした時、後ろから誰かに抱き締められた。
「っ、ちょ、いお、り」
「僕が一緒に持っててあげるから、頑張ろ? 」
ドキッ。首筋に依織の息が掠める。
「適当にバッドを振り回すんじゃなくて、玉をよく見るんだよ。
構えはそうじゃなくて、こうやって·····」
バッドを握る手を上から掴まれる。
心拍が上がり、顔が熱くなっていく。
カンッ!
「あっ!あたっ·····た。当たった! 依織、俺初めて当たった」
あまりの喜びにバっと依織の方を振り返る。
チュッ
「··········へ?」
「ふふっ、良かったね。七瀬くん」
頬に、キスされた·····。
かアッと顔が熱くなる。
「そろそろ時間だから行こうか」
唖然とする俺の手を掴み、依織は出口へと向かった。
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