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第2話 ロックな話

五月の中旬。 夏の大会に向けてそれぞれの部活が日々練習に励み青春を謳歌している時。 俺は薄汚れた音楽準備室でため息をついていた。 「なー、結局どうする。流石に3人じゃバンドは組めないぞ。誰かベースできるやつ知らないの?」 「そんな場合じゃないよはるくん! ただでさえ少ない部メンが、1人欠けようとしてるんだよ? もっと危機感もって!」 俺が一年から所属している軽音部は、現在部員9名。顔を出しているのが3人。いや、今や2人になろうとしている。 去年は先輩達がいたからまだバンド編成に悩むようなことはなかったが、それがごっそり抜けてしまった。 「あーどうしよう。このままじゃ夏の発表に間に合わない。埜明、もう無理だ」 「お、俺、あっくん探してくる」 埜明があっくんと呼んでいるのは、九重 暁。部活に来ている3人のうちの1人だったのだが、ここ最近、全く部活に顔を出さなくなったのだ。 このままいくと、2人だけのバンドをつくらなければならなくなる。 それだけは本当に勘弁してほしい。 数十分埜明を待っていると、だんだんとこちらに近づいてくる悲鳴が。 「蜂谷!? ごめん! ごめんって。痛い痛い! 俺にもちゃんとしたアリバイが‥‥イギャっ!」 「うるさいよ。俺はただあっくんの腕を掴んでるだけじゃん、大袈裟だよ」 「それがものすごく痛いんです! 陽樹! 助けて」 埜明に腕を掴まれ部室に入ってきた暁。 髪を金色に染めてあるから側から見るとヤンキーに見えなくもないが、実際は優しいいいやつ。 半分涙目になっている暁の腕を離すまいと、がっちりホールドしている埜明をなだめる。 「で、なんで部活来なかったんだよ。どんな事情より俺たちのこと考えるのが当たり前だろ!」 「うわー図々しい。俺だってちゃんと部のこと考えて行動してたんです。その結果、1人いいやつを見つけて」 「いいやつって、あっくんどういうこと?」 一気に暁に詰め寄る俺たち2人。 「唯一いなかったベースできるやつ、俺の知り合いにいたからさ、今日5時にくるようにって伝えておいた。だから俺にしたこと謝って埜明! 謝って!」 「それとこれとは話が別。部活に来るのは当たり前。あっくんが悪い」 ぺちゃくちゃと痴話喧嘩を始めた2人を横目に、俺はギターを取り出した。 コンコン 「お、来たかな? 陽樹出てくれる? 俺まだ取り込み中」 扉に向かって手を伸ばす。 「そういえば、誰連れてきたか言ってなかったな‥‥」 ガラっ 「どうぞ入って‥‥‥、え?」 「え、七瀬くん?」 「お前達2人と同じクラスなんだろ? 五十嵐 依織。仲良くしろよー」 俺の目の前には、楽器を背負った依織が俺と同じように驚いた顔をして立っていた。

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