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「七瀬くん眠いの?」
「当たり前だろ。こんな早くに呼び出されてんだから。ちょっとは考えろよ」
いっそこのまま寝てしまおうかと思った時。
「そんなに眠いなら寝ていいよ。肩貸すから」
グイッと頭を引かれ、依織の肩に乗せられる。
「ちょ、いいって。バカ!」
手を振り払おうとすると、しーっと子猫を指さした。
「起きちゃうよ? 別に恥ずかしがることなんて何もないのに」
「別に恥ずかしがってるわけじゃない。何で依織がいるのに寝なきゃいけないんだよ」
ぶつぶつ文句を言うけれど、また睡魔が襲ってきた。
「ちゃんと起こしてあげるから寝てていいよ。安心して」
依織の温かい手に頭を撫でられ、俺は眠気に抗えず目を閉じた。
誰かに髪を触られている。
うわっ、首はくすぐったいから触るなよ。
あ、頬をつつかれた。
「う、ん?」
「あ、七瀬くん。目が覚めた?」
霞む視線の先には公園の遊具。
あれ? 俺横になってたっけ?
そして、右耳に感じる温もりと弾力。
上から聞こえてきた依織の声。
これはもしかして‥‥
「チェンジ」
「は? 何が?」
「今の依織と美脚の埜明をチェンジして!」
そのままの体制で言い放つ。
「酷くない? そんなに僕の膝寝心地悪かった?」
冗談で言ったつもりだったのに本気で焦る依織に思わず声をあげて笑う。
「ふははっ! 別に、寝心地よかったよ。子猫はどっか行っちゃった?」
「遊び仲間とどこかにね。さぁ、邪魔者もいなくなったし、僕達も遊びましょうか」
「邪魔者って? 子猫のこと?」
依織の顔を見ようと頭を上げようとすると、抑えられてしまった。
「当たり前でしょ? まぁ僕が連れてきたのも悪かったと思うけど、僕をそっちのけでイチャイチャしてさ。本当腹立つ」
拗ねたような口調で俺の頬を撫でる依織。
「僕にだってあんな顔見せてくれたことなんてないのに‥‥」
自然と体温が上がる。
お前、そんなこと言うキャラじゃないだろ。
「だから次は僕と遊んで」
上から左耳に息を吹きかけられ、身体がビクッと反応する。
頬を撫でていた手が俺の唇へと向かっていく。
「ちょ、依織‥‥」
「次は七瀬くんからしてくれるんだったよね?」
あの時の記憶が蘇る。
何でそんなこと言っちゃったんだよ!
首元を弄られ、こそばゆくて声が出る。
「んぁ、ちょっと、いお、りっ! やめろ、ダメっ」
「僕は今機嫌が悪いから、七瀬くんからしてくれないならここでキスマつけるよ?」
「わ、わかった! やるから、それはやめろ」
起き上がると、本当に機嫌が悪そうな依織。
いや、機嫌が悪いというか、やっぱり拗ねたような顔。
初めて見る依織の子供のような一面に、可愛いなって思ってしまう。
「いいよ、七瀬くん。して?」
依織が目を閉じる。
依織の肩を掴み、少しずつ近づいていく。
心臓が張り裂けそうなくらいに鳴っているのがわかる。
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