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いつか傘を閉じるまで
学校を出るときに降り出した雨は、地元の駅に着く頃には本降りになっていた。
僕は小さな折りたたみ傘を取り出し、同じ制服を着た男の隣に並び立つ。
「お前、マジで折りたたみ傘を持て」
傘を広げ、半分差し掛けた。
「お前、マジで面倒見がいいよな」
「幼なじみだから仕方ないだろ。ほかのやつなら放っておくよ」
傘なんか役に立たないほどの雨に、僕たちのシャツは濡れ、肌の色が透けていく。
「幼なじみだからかぁ」
「幼なじみだからだよ」
本当はそうじゃない。透けた肌を見たくなるような感情なのに、僕は前だけを見て歩いた。
「本当に幼なじみだから?」
顔をのぞきこんでくる彼と目が合った。僕は反射的に傘を抜け出し、雨の中へ走った。
でも、すぐに追いつかれた。再び頭の上を傘が覆った。雨を避ける事はできても、空は見えない、真っ黒な傘。
「幼なじみなら、ちゃんと隣にいろよ。逃げんな」
僕の腕をつかむ力が強くて、かつて逆上がりができずに泣いていた彼の成長を感じた。
「僕たち、いつまで幼なじみでいるんだろうね」
「親から自立するまでくらい?」
その返事に、僕はまあまあ納得して、彼の家に向かって歩き出した。
「俺のウチ、寄っていく? ゲームの続きしよ」
「いいよ」
とりあえずは、このままで。
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