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疲れすぎて、ふわふわ(2/3)
僕たちは予約したラブホの部屋に入るなり、巨大なベッドに倒れ込んで爆睡した。性欲より睡眠欲が勝った。
相手のいびきや寝相を意識する瞬間もなく眠り、僕のスマートウォッチが震えて、藍沢が飛び起きたので、僕もちょっと目が覚めた。
「はい、藍沢ですっ。すいません、寝坊しました! ええと、ここ、どこだっけ。あ、ラブホです。赤木さん? はい。俺、赤木さんと一緒にラブホにいます!」
僕はまだ聴覚以外は眠っていたので、藍沢が僕のスマートウォッチを使って、上司に変な説明をしていることについて、何とも思わなかった。
ただスマートウォッチの向こうから「赤木、起きた?」という上司の声が聞こえたので、もにゃもにゃと
「寝てるー。午前半休くださーい」
と言った。藍沢は
「俺も俺も俺もっ! 午前半休をっ! とりますっ! 午後から赤木さんと同伴出勤しますっ!」
と叫んで通話を切った。そして寝た。
よく寝たなぁと思ってちゃんと目が開いたときには、午前十時を過ぎていた。
まだ寝ている藍沢を放置して、バスタブに湯を貯めながら、全身を丁寧に洗った。ここ数日はゆっくりシャワーを浴びる余裕もなかったから、とても気持ちよかった。
ピンク色の入浴剤を溶かして湯に浸かり、備え付けのテレビでお医者さんごっこをしてたわむれる男女を見ていたら、全裸の藍沢がまだろくに開かない目を擦りながら入ってきて、無言でシャワーを浴び始めた。
その水音も、髪を洗う荒っぽさも、飛んでくる水滴やシャンプーの泡も嫌だとは思わなかった。僕は藍沢に甘いなと思った。
藍沢は僕の背中とバスタブのあいだに割って入ってきて、バックハグをしながら「おはようございます」と僕の頬にキスをした。
そのあと、黙って僕に頬を向けたまま待っていたので、僕も「おはよう」とキスをして、二人でエッチな映像を見ながら、何も感じずにぼんやりした。
「なんていうか。こういうの、なんか新鮮ですね」
僕の肩にあごをのせて、藍沢はもごもごと言った。
「こういうの?」
「好きな人と同じベッドでただ爆睡して、ただエッチなビデオを見て、ただ一緒に風呂に入るだけっていうの」
僕は小さく首をかしげた。
「そう? 僕は相手が疲れてるなら無理に求めたりしないけど」
「それ、優しさですか? それとも……経験値の差?」
「どっちも、かな」
藍沢がちらっとこちらを見た気配がした。
「赤木さんって、今までどんな恋愛してきたんですか?」
「うーん。酒とギャンブルと借金と浮気と暴力、あと思いやりのないセックスはよくないと学ぶような恋愛。誰も幸せにならないよね」
「何があったんですか。人生濃すぎませんか?」
「たった数か月の出来事だったから、そんなに濃くもないよ。こちらが関わらないと決めれば、それでいい話」
藍沢は心配そうに僕を見て、抱き締めてくれる力が強くなった。
「もう過ぎたことだから、大丈夫だよ。変な話をしてごめんね。ただ、次の恋愛へ進む時は慎重になっちゃう」
「わかりました。急かしません。ゆっくり、俺と付き合ってください」
「うん」
再びベッドに戻って、僕たちは何をしたかというと、また寝た。比喩ではなく、純粋な睡眠だ。
でもさっきと違ったのは、枕をくっつけ、互いの顔を至近距離で見ながら眠りに落ちたことだ。
ちょっと照れくさくて、心が安定して、ふわふわと心地よい睡眠だった。
12時15分にアラームが鳴り、僕たちは起き上がって服を着始めた。
僕がポロシャツを着て、チノパンに左足を通した時、藍沢が「やっぱり」と呟いた。
「どうしたの? 何かあった?」
「やっぱり、赤木さんとしたいなと思って。せっかくのチャンスだから」
「今から? 会社まで20分くらいかかるよ?」
「15分で終わらせます! 前戯5分、準備5分、本番5分!」
手のひらを広げてアピールする姿は、どこか必死で可愛かった。
その意気込みが妙におかしくて笑ってしまったけれど、僕もキスすらしないまま部屋を出るのは、ちょっともったいない気がしていたし、短い時間で集中して取り組むのも楽しそうだと思った。
「いいよ」
僕の答えに、藍沢の顔がぱっと明るくなった。
僕たちは着始めていた服を脱ぎ、ベッドの上に上がった。直接触れる肌はなめらかであたたかで、僕の肌を滑る藍沢の手は大きくて優しかった。
柔らかく舌を絡めるふわふわのキスをしながら、ベッドの上に倒れて、愛撫を受けた。
あごから首すじ、鎖骨、胸と、優しさのこもった唇が滑っていくのが心地よかった。胸の粒を口に含まれて、僕が鼻にかかった声を上げても、みっともなく腰を振ってもしつこく快感を押し込まれて、僕は軽い絶頂へ導かれた。
反対の胸の粒も同じようにされて全身の力が抜ける。
藍沢は、「ここは好き? ここは? 感じる?」と質問攻めしてくるタイプだった。まるでコードレビューでもするみたいに一つずつ確かめてきて、コイツはこんな時までエンジニアなのかよと思ったけど、僕が嫌がることは絶対にしたくないという強い意志と優しさに包まれるセックスは、純粋にうれしく、心地よかった。
開いた脚のあいだに指が滑り込んできたときも、激しさは皆無だった。粘膜を傷つけないように優しく撫でて、待って、僕の蕾を開いていった。こんなやり方で蕾が開くなんて、僕自身も知らなかった。
「いいですか?」
囁く声も優しかった。
いつもなら感じる圧迫感もなく、不思議とすんなり受け入れられる。
ただ、満たされる感覚がゆっくりと広がっていく。
「ん。藍沢……気持ちいい」
僕はずっと気持ちいい、気持ちいい、藍沢、藍沢と言い続けていた気がする。
今までセックスは互いの欲をぶつけあう激しいもの、痛みをこらえ、絶頂まで苦しみ続けるものと思っていたから、こんなにふわふわと絶頂をめざすやり方は知らなかった。
うながされて、あお向けに寝た藍沢の腰にまたがった。張り詰めた硬さを受け入れるとき、藍沢はずっとまぶしそうに目を細めて僕の姿を見ていた。そして、根元まで密着するとうれしそうに笑った。
「ずっと、こうしたかったんです。配属された日に一目惚れして、それから毎日会うたびに、話すたびに好きになっていきました。だから、めちゃうれしいです」
顔を真っ赤にしながら言われて、僕まで熱が伝染した。両手を繋ぎながら腰を揺らし、こみ上げてくる快感が苦しくなってきたとき、僕たちは顔を近づけた。腰を律動させながら、甘い苦しさに喘ぎ声を上げながら、揺れる口を口で捕らえて、互いの唇を重ね、舌を絡めて吸った。
快感の水位は鼻先まで来ていて、僕は叫びながら腰を揺らした。
「あっ、あっ、んんっ。藍沢っ、藍沢。もういきそうっ。いく」
高まりが頂点に向かって駆け上がる。藍沢の身体も震えた。
「赤木さん……!」
彼の熱がはじけるのと同時に、僕も限界を迎えた。
快感が抜けてふわふわする身体を、藍沢の隣に横たえた。
呼吸が落ち着いたあと、藍沢が僕の前髪を頬からはがしてくれてから、笑った。
「ちゃんと15分で終わったでしょう?」
僕はスマートウォッチを見て答える。
「17分かかってるよ」
「マジですか。最適化しまくったつもりだったんですけど。まだ処理が重かったか!」
一緒に笑って互いに感謝のキスをしたあと、僕は先にバスルームへうながされた。
シャワーを浴びながら、まだ自分の身体の奥に燃焼しきらない熾火を感じた。湯を浴びながら、ついぼんやりする。
「僕、自覚してるよりも、藍沢のことが好きなのかも」
そのとき、ノックされてバスルームの扉が開いた。
「赤木さん」
「どうしたの?」
藍沢が僕の背後に立った。
「ご相談なんですけど。俺、もう一回したいです」
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半休と言わず今日は1日まるまる有給でいいのでわww そんで時間をかけてじっくりたっぷり愉しめばいいと思います(・∀・)ニヤニヤ←
読んでくれてありがとう‼️ ホントだよねぇ。せっかくラブホにいるんだから、仕事なんかしないでやりまくればいいのにさーwww
すいません、ゲストユーザーになってました💧
お読みいただき、コメントいただき、ありがとうございます︎💕︎ パートタイムラバー、懐かしい曲ですね🎶 2回戦も頑張ります💪🔥
なんと!!時間に追われるパートタイムラバーかと思いきや、嬉し恥ずかしの2回戦🤍もうワクワクが止まりません🤍
幸せに浸りたいけど時間ばっかり気になってハラハラしちゃいました笑 明日もぜひリハビリにお付き合いさせていてだきます! それにしても赤木さんどんなお相手とお付き合いしていたのかしら…
忙しなくてすみません💦笑 明日もおまけを書きます。よろしくお願いします🙏 赤木の過去は、書くとすれば番外編になっちゃうと思いますが、私も気になっています。 今日もお読みいただき、コメントありがとうございます︎💕︎