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4 男前と弁護士

 あの人のこと、見ないようにしないと。  ノンケは駄目、絶対。  大学の演劇サークルに所属していた俺は、実写BLゲームのオーディションを気合い入れて受けて、筆頭キャラの大学生『小野田』役を獲得した。  絶対この仕事面白い。  だってね、俺ホントに男好きだから。  顔合わせに行ったら、俺と同類なのを公言する猛者が二人いて、あと、一人は多分中身が女の子で、みんな大学生。  残りの二人は、至ってまともな、オファーを受けた大人の役者だった。  この作品は結構厄介な設定で、シナリオが一人十通りあり立ち位置が微妙に代わって、感情移入が難しい。  なので、一つのカップリングで二日かけてじっくり撮影して、気持ちを切り替えて三日目に次のカップリングで撮影する。  二日を五回やって終了、休みも入るから撮影に半月くらいかかる。  今日は打ち合わせやら読み合わせで撮影がない。  俺の最初の相方は、ヤンキー高校生の鳴瀬くんだった。  静止画は構図が決まっているので、サラッとこんな感じかなと練習した。  鳴瀬くんは、俺みたいな外見の人間が好きなのだと白状して、たびたび照れまくっていた。  あんまり可愛いから抱き締めてたら、公言しなかった男好きがあっさりバレた。  別にこんな仕事場だからバレてもいいんだけど。  鳴瀬くんが、スタッフに呼ばれてどこかへ連れて行かれる。  台本をパラパラとめくっていると、後ろで練習していたカップルの声が耳に入った。 「キスって、ホントにするの?」  チラッと後ろを見る。  弁護士の北上先生だ。  この人ホントにノンケなんだな、何でこんなトコに放り込まれたんだか。  台本を見るフリをして話を聞いていると、全然クールな弁護士っぽくなくて面白い。  もう一人のまともな役者、高校教師の南方先生を見ると、ショタの川崎くんをお姫様抱っこして、何やら楽しそうにしている。  また後ろに耳を傾ける。 「顔が良くても、性格がね。優柔不断、の一言に尽きるね!」  自分の欠点を声高らかに言い放つ。  困るなー。  ノンケでヘタレとか、大好物なんだけど。  ノンケに目をつけてもいいことないって、常識だし、俺は何度も学習してる。  違う、学習してないから同じ失敗してるのか。  南方先生はなんか、(せま)ったら(こた)えてくれそうな感じするけど、  北上先生は、迫ったら困り果てる顔、いや声が想像つく。  あの人に興味持っちゃ駄目。  あの人は眼鏡でクールな敏腕弁護士。  興味なんか、ないからね。  あの人との撮影は一番最後。  長いな、何もなければ、いいんだけど。

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