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第二章・3

「高校卒業したら、俺のアパートに来いよ。狭いけど、ここよりマシだろ」 「ありがとう、兄さん。ありがと……」  ぽろぽろと涙をこぼす弟の背中を、兄は穏やかに撫でてあげた。 「また、園芸やれよ。園芸部、あるだろ。あの学校」 「うん」 「瑞樹は、植物が大好きだからな」 「うん」  時々、家に帰るから。  瑞樹が元気か、確かめに来るから。  そう、兄は言ってくれた。 「我慢できなくなったら、遠慮なく連絡しろよ。すぐに迎えに来るから」  ありがとう、兄さん。  でも、もうすでに我慢できないかも。  いっぱいいっぱいなんだ、僕。  それでも、本心を言えずにいた。  ただ、園芸部には入ろうと心に決めていた。

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