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第二章・4

「求人募集」  思わず、口に出していた。  あれから3年が過ぎ、瑞樹は高校を卒業した。  すぐに家を出て、兄を頼った。  好きなだけ居ていいよ、と兄は笑顔で言ってくれたが、いつまでも居候を続けるわけにもいかない。  貯金も底をつきかけ、何か働き口を、と考えていた瑞樹だった。  そこで見つけた、求人だった。  郊外とはいえ、ここはそこそこ大きな地方都市だ。  だのに、電柱に張り紙とは、どういうことだ。  瑞樹は、その求人募集の張り紙をはがして手に取った。 「もうすぐ21世紀も4分の1過ぎるってのに」  しかも、手書きである。  紙の上の方に赤で『求人募集』と書かれ、下に青で電話番号が書かれていた。  そして真ん中には、花の絵が大きく描かれている。  肝心の求人元の情報より、この花の絵の方が大きい。 「トルコギキョウ。この花に、何か意味があるのかな」  瑞樹は、スマホを出して花言葉を調べてみた。 「トルコギキョウの花言葉は、希望、かぁ」  希望。  今の僕に、一番必要な言葉かもしれない。  そんな風に、瑞樹は考えた。

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