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第二章・6

「一丁目の、一番大きなお屋敷……、ここだよね」  兄に『叶植物園』のことを尋ねると、この辺じゃ有名だ、と教えてくれた。 『人によっては、『お化け屋敷』なんて呼ばれてるけどね』  あんなことを言っていた、兄。  その屋敷を見て、瑞樹はなるほどとうなずいた。  大正時代の洋館のようなたたずまいの大きな屋敷だが、かなり古びて見える。  これは本当に、大正時代に建てられたものかもしれない。  屋敷は塀に囲まれ、唯一開いた門は鉄扉が錆びている。  門から玄関までがまた遠く、飛び石は夏草で覆われほとんど見えない。  高く伸びた草をかき分け、瑞樹はようやく玄関にたどり着いた。 「ホントに人が住んでるのかな」  呼び鈴を鳴らして数分たち、やっとドアが開いた。

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