15 / 67

第二章・7

「いらっしゃいませ。どちら様ですか?」  出てきたのは、初老の男性だった。  黒のスーツを粋に着こなし、柔らかな物腰で訊ねて来た。 「あ、あの。僕、白川 瑞樹です。面接に来ました」 「14時に、若様とお会いになる方ですね。どうぞ、こちらへ」 (若様!?)  どうやら、この男性が叶さんではないらしい、ということは解った。  しかし、『若様』とは、一体!?  磨き抜かれた長い回廊を歩き、瑞樹は大きな両開きのドアの前に通された。  重い木製のそれは静かに開かれ、中の主人へ来客を知らせた。 「若様、求人面接の白川 瑞樹さまがいらっしゃいました」 「早いな。5分前だ」  奥のデスクには、背の高い青年が掛けていた。  少し長めの黒い前髪をかき上げる姿が、やけにセクシーだ。  切れ長の目からの眼差しに、射られそうだ。  服の張り具合から、その下の筋肉がうかがえる。  だが、その着ている服は、モスグリーンの作業着だった。 (何か、若様、ってイメージじゃないけど……)  興味津々の中、瑞樹の面接が始まった。

ともだちにシェアしよう!