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第二章・8

 青年は、叶 誠(かのう まこと)と名乗った。 「この求人募集に描かれている花を、トルコギキョウとすんなり言えたのは、君が初めてだ」 「はぁ」 「そこで質問だが、トルコギキョウの花言葉を知っているか?」  それなら、昨日ググったばかりなので、解る。  瑞樹は、答えた。 「はい、『希望』です」 「よし、採用だ」  即座に立ち上がった誠を、瑞樹は慌てて止めた。 「ま、待ってください! そんな、一方的に決められても!」 「不服か?」 「勤務内容とか、労働条件とか、何も知らないんですけど、僕!」  それには、傍に控えていた先ほどの男が、契約書を瑞樹の前に提示した。  その契約書の内容に、瑞樹はさらに驚いた。 「勤務時間:好きなだけ。休憩:好きなだけ。休暇:好きなだけ。各種福利厚生:有り。退職金:有り。初任給:手取り30万円。……30万円!?」  その契約書の内容のルーズな点に驚いていたが、この月給の良さには最も驚いた。

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